LINE entryの新しい学校向け教材「自分たちの町のみりょくを楽しくしょうかいしよう」(小学校3年生の総合的な学習の時間用)が7月16日に公開されました。制作にあたり、元となる教材をご提供いただき、また監修としてご指導・ご協力をいただいた、京都市立御所南小学校の米谷誠介先生にお話を伺いました。小学校のプログラミング教育の現場の苦労と工夫と喜び、そして意義とは?

学校向け教材「自分たちの町のみりょくを楽しくしょうかいしよう」

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LINE entryとその教材は、どなたでも無料でダウンロードしてご利用いただけます。

―― 本教材は、米谷先生が京都市立紫野小学校にいらっしゃったときに作られたものを土台としております。どういった経緯でこちらの教材を作られたのでしょうか?

米谷先生(以下敬称略) 私が勤務していた紫野小学校が、国立教育政策研究所から「総合的な学習の時間」の研究指定を受けていたことが端緒となりました。当時、小学校プログラミング教育の実施に向けた準備を推進することを目的として、文部科学省、総務省、経済産業省が連携して立ち上げた「未来の学びコンソーシアム」や、「みらプロ※」の取り組みにも参加させていただくことになりました。こうしたことが大きなきっかけになったとともに、京都市がLINE様と協定を結んでいた背景もあり、LINE entryを使用した教科の実践を進めていきました。
※みらプロ:未来の学びコンソーシアムにおいて実施していた、企業と連携して「プログラミングが社会でどう活用されているか」に焦点を当てた総合的な学習の時間における指導案等の提供を行なう取り組み。URL:https://mirapro.mext.go.jp/

―― そのときに作られた教材のテーマは、校区内の商店街をプログラミングを使って紹介するというものでした。このテーマを選ばれた理由は?

米谷 紫野小学校の校区にある鞍馬口通の商店街は昔ながらの商店街ですが、できてから90年近く経った今では、お客さんの数も店の数も減っていました。ある日、商店街の会長さんとお話をさせていただく機会があり、その中で子供たちの柔軟なアイデアや力を借りて商店街をより良くできないものかというリクエストをいただきました。そこで、これらのことを教材化し、「総合的な学習の時間」において、探究的な学びを進めていく過程にプログラミング教育を適切に位置付けた単元を構想できないものかと考えました。

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先生が作られた原案では紫野小学校の校区にある商店街をテーマとしていたが、LINE entryの学校向け教材では、全国的に知名度のある富士山や浅草の雷門にアレンジした。上図はスライド用データの一部で、教材にはこのほか指導者用のガイドブックや、児童用のワークシートなどが含まれる。

―― 教材化に当たって苦労されたことはありますか?

米谷 総合的な学習の時間において、探究的な学びを進めていく過程にプログラミング教育をいかに適切に位置付けるかというところです。

―― 単純にプログラミングそのものを教えるのではないということですよね。どのように解決されたのでしょうか?

米谷 子供たちにとってプログラミングの体験は少なからず楽しいものであるようで、操作方法の指導さえすれば、その後は自ら進んでプログラミングの操作を習熟させていきました。ですから、プログラミングの操作に関して指導に苦労することはあまりありませんでした。ただ、何のためにこのプログラムをするのかという目的意識、そして誰のためにするのかという相手意識を繰り返し指導することで、単なるプログラミングの操作に終始させないように留意しました。ですから、目的意識と相手意識について繰り返し指導することで問題を解決できたと考えています。

―― なるほど。京都市とLINE社との協定があったとのことでしたが、プログラミング学習のプラットフォームとしてLINE entryを採用された理由としてはほかに何かありましたか?

米谷 はい。3つあります。私の考えるLINE entryの良さの1つ目は、企業名やキャラクターが子供たちになじみがあったことです。実際に、子供たちも見たことがあると言っていましたし、ブラウン君が画面に出たり動いたりするだけでも歓声が上がるほどでした。
 2つ目は、京都市ではScratchを中心に扱うことになっていますが、LINE entryはScratchを模して作られたと伺っていましたので、子供たちは、将来的にScratchへの移行もスムーズにできると期待できたことです。
 3つ目は、何よりLINE entryの魅力だと思うのですが、「シーン」というものがあります。シーンの切り換え機能を用いてプログラミングを進めることで、プレゼンテーション形式の作品を作れることです。今回構想した単元では、自分たちの町の魅力を紹介するためにプレゼンテーション形式に落とし込むことが、先ほど申し上げた目的意識、相手意識を持たせるためには必要不可欠だと考えていました。

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実際に子供たちが作った作品より。LINE entryの「シーン」機能を使ってプレゼンテーション形式にするだけでなく、○×クイズのプログラミングにもチャレンジした。

―― 子供たちの反応はどうでしたか?

米谷 こちらがすべてのお膳立てをせずとも、自らトライ&エラーを繰り返しながら、どんどんプログラミングの操作を習熟させていったことは、うれしい誤算でした。また、子供たちがプログラミングしてできた作品を、タブレット端末とともに商店街の会長さんのお店に置いていただきました。さらに翌年度には、それをYouTubeを用いて学校のホームページにも掲載しました。自分たちがプログラミングしてできた作品が不特定多数の人たちに伝わり、そのことで人を喜ばせることができたとか、社会をわずかでも変化させることができたというような実感、達成感、充足感、そういったものを子供たちの学習の振り返りについて聴いたり読んだりする中で感じ取れました。

―― そのような子供たちの声があったのですね。

米谷 はい。さらに、こんなこともありました。想定していたのは町の紹介をひと通りプレゼンテーションして終わるというものだったのですが、ある子が「先生、このプログラムを全部見たあと、終わったままの画面やったら、次にくるお客さんが困るやろ。だから初めのシーンに戻したいんや」ということを言ったんです。それを聞いた別の子が「お客さんって、1人の人が画面を見ても、次の人が目にしたとき止まったままになるから、自動再生しておきたい。終わったら元に戻ってずっと見られるよう(ループした状態)にしたいんやけど、先生、どうしたらいいやろ?」って。そうした子供たちが生み出したアイデアに呼応して、また次の新しいアイデアが生まれていく、そんな子供たちの姿に興奮したことは記憶に新しいです。

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京都市立紫野小学校での小学3年生の授業の様子。町の商店街を紹介するプレゼンテーション形式のプログラムを作り、実際にお店に置いてもらったり学校ホームページに掲載したりした。

―― それでは、その紫野小学校での教材を元にしたLINE entryの学校向け教材「自分たちの町のみりょくを楽しくしょうかいしよう」についてお聞きします。米谷先生は、本教材でどのような学びがあるとお考えでしょうか。

米谷 実際のプログラミング操作を通して、プログラミングに必要な順次、反復、条件分岐(条件分岐は編集上オマケという扱いになっていますけれど)といった3つの基本的な動きを楽しみながら理解することができると思います。そして単なる操作に終始せず、プログラミングを活用して問題を解決したり、人を喜ばせたり、社会をわずかでも変化させることができるという体験をさせることができます。言うなればプログラミングの有効性を実感できるということです。

――どのような児童、また先生にこの教材を使ってもらいたいですか?

米谷 どの町、どの地域にもそれぞれの魅力があります。ですから願わくば、全国各地で幅広く活用していただければありがたいと思っています。私はこの4月から(御所南小学校に)異動することになりましたけれど、前任校、現任校の両校の先生方から本教材の活用はもちろん、LINE entryを用いた新しい教材の開発を進めていきたいという声をいただいています。今回のこの教材がきっかけとなって、新たな教材が開発されることもまた願っています。

―― 今後もプログラミング教育をされていく中で、どのような取り組みをされていかれるのかお考えがありましたら教えてください。

米谷 新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、GIGAスクール構想の実現が前倒しされたことは、プログラミング教育の全面実施にも追い風になっていると考えています。これから実践例も数多く紹介されることになるでしょう。しかし、プログラミング操作だけに終始することのないように、たとえばドローンを飛ばすとか、ロボットを動かすことだけに終始しないようにと考えています。なぜドローンを飛ばすのか、何のためにロボットを動かすのか、そうした目的意識、相手意識を大切にしながら、各教科・領域における学習過程の中にプログラミング教育が適切に位置付けられるようにしていければと、私自身も自戒の念も込めて思うとこです。

―― 最後に、これからプログラミングに触れる子供たちや先生、これを読んでいる方にメッセージをいただけないでしょうか。

米谷 予測が困難な時代だ、何が起きても変ではない時代だと言われますが、そうした時代を生きる子供たちが未来を切り拓くために大切なことの1つが、思考を深めることだと思います。学んで得た知識をどうつなげるのか、どう活かすのか、このことを考えることが思考を深めることにつながると思います。しかし、子供たちに「よく考えなさい」、「思考を深めなさい」と指導をしても、なかなかうまくはいかないと思います。では、どうすればいいのか? その解決方法の1つが、目的意識や相手意識をもってプログラミングの体験をすることだと思います。予測困難な時代に未来を切り拓くための大切な体験になるのではないかと思います。 またコンピューターは、これからの未来を生きる、切り拓く子供たちにとって学習・生活両面においても必要不可欠なツールだと思います。ですから、コンピューターと密接な関係にあるプログラミングについて学ぶことは、世の中にある「もの」、「こと」、「人」への理解を深め、自分の将来の可能性を広げることにもつながるのではないかと思います。

―― また、良い教材作りのためにご一緒できたらうれしいです。本日はありがとうございました。


●プロフィール:米谷誠介先生
京都市生まれ京都市育ち。
2003年度京都市立小学校教員採用。京都市小学校社会科教育研究会・京都市小学校生活科・総合的な学習教育研究会に所属。
2018年度より2年間、京都市立紫野小学校在職時、国立教育政策研究所より「総合的な学習の時間」の研究指定を受ける。
2019年度、文部科学省、総務省及び経済産業省が設定した「未来の学びプログラミング推進月間」の取組に参加。
以降、LINEみらい財団と連携・協力してプログラミング教育の推進を図る活動に参加。
2021年度より、京都市立御所南小学校教諭。

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