小学校でプログラミング教育が必修化となり、並行してGIGAスクール構想が全国で急ピッチに進む2021年。今、その現況はどうなっているのか、またどうあるべきなのか。その上で教える側はプログラミング教育をどう捉えていくのかなど、いくつもの難問をLINEみらい財団の福岡が、千葉大学・藤川先生にぶつけてみました。題して対談企画「プログラミング教育の現状に喝!」。第1回は、GIGAスクールをめぐる学校現場の状況と課題について伺いました。

スクリーンショット 2021-09-28 142229
左から千葉大学教育学部教授の藤川大祐先生、みらい財団の福岡俊弘。

福岡:早速ですけども、ちょうどこの対談をさせていただく前にデジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省の4省庁から、「GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」という資料が出ました。これ、ざっと見ましたけどそこそこ良くできた資料だなと思っていまして。

藤川:膨大な数のものを集計しているので価値が高いですよね。

福岡:アンケート結果をただ集計するだけじゃなくて、テキストマイニングをやって、そこから回答した人たちのインサイトに迫る考察もしていて、こういう試みはすごく評価できると思ったんですね。

藤川:国の資料でこれほどテキストマイニングが使われているものも初めて見たような気がします。しかも、7月に調査してもう出してるわけですから早いですよね。

福岡:早いですよね、さすがデジタル庁を名乗るだけのスピード感です(笑)。

藤川:ちょっと本気出してみたみたいな感じがします(笑)。

福岡:ふんだんに使われているワードクラウドもよくできてますね。で、その中でちょっと気になったことがいくつかありまして、藤川先生にこのあたりぜひ解明していただこうと思っています。

図25
GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」より

福岡:まず、全体を見通して、3つぐらいの非対称な構図があるなあ、と。その1つめは、子どもと大人の意識がまったく対称になっていない、というか、かなりの差がある。
 2つめは、家庭と学校の非対称性です。これもすごく目立っていました。そして3つめが学校と民間の意識の差。そのギャップに驚きました。GIGAスクールの現状に対して、民間の人はすごい楽観的に見ているのだけど、学校関係者はとても悲壮感を持っているみたいな。こういう非対称性がとても気になりました。
 一方、小学生、中学生、高校生ら、受け手側の児童や生徒たちのコメントは、まあそうだよねっていう納得感がありました。小学生はルールを守らなければという意識があって、先生の言うことをよく聞いている印象です。それが中学生になるとちょっとそういう部分が薄れてくる。高校生になるともう「ネット遅いよ」とか(笑)そういう話ばっかり。

藤川:まあ非常に実態を反映したアンケートだなって思いますね。やっぱり中学生高校生はスマートフォンを日々使っているわけですよね。高校生は100%近く、中学生でも7、8割は使っている。なのでインターネットを使うこと自体はさほど特別なことではないわけです。
 他方、学校でスマートフォンを使っちゃいけないみたいな話も当然あるわけです。小中学生については原則持ち込み不可。例外的に認める場合でも、朝、先生に預けるとかして校内で使うことはダメといったケース。
 一方で高校生については学校への持ち込みもOKですし、授業中使わなければ休み時間に使っているのは普通にあるわけです。また、スマホの学習コンテンツみたいなものが生徒さんたちの間でかなり使われるようになってきていて、特に数年前からリクルートのスタディサプリというサービスがかなり広く使われています。
 また、最近だと教育系YouTuber、例えば葉一(はいち)さんとかがけっこう人気があったりして、そこもかなり親しみを持たれている。そうすると、もう学習のためにネットを使うことも高校生ではわりと当たり前になっていますし、さらに中学生でももう珍しくなくなってきている。
 ところが、小学生というのはまだまだ学習ではネットをあまり使わない。それでもネットっていうと楽しいもののようだから、いろいろと注意して使わないとまずいぞと、小学生はむしろモラルを意識する。中高生以降はどう使うかですね。学習に端末を使うのは当然で、ようやく学校で使えるようになったかっていうぐらいの感じですよね。だから高校生とかは、使い勝手が良いか悪いかみたいなアンケート結果になってくるのだと思います。

福岡:なるほどー。
 あと、面白かったのは保護者の検索キーワードで多かったのが“YouTube”という言葉です。
 これ、子どもたちが端末を持って帰ってYouTubeばっかり見ている、それを親たちが心配している、そんな光景が思い浮かぶわけです。が、先生の検索キーワードにはYouTubeは出てこない。これって、2021年のお茶の間の風景を覗き見ているようですごく面白い。

図24
GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」より

藤川:実際そうですよね。依存が一番心配なのはゲームだと思いますけれども、ゲームはGIGAスクールの端末ではそんなにやらない。ゲームは自分のスマホでやりますからね。そうすると何が心配かとなると、やっぱりYouTube。かなり人気が高いですから。片っ端からいろんな動画を見てそれで生活が乱れるんじゃないかっていう恐れは当然あるわけです。ただ子どもたちは何とも思ってなくて親だけが思っている(笑)。だから、保護者だけ、心配する気持ちの反映としてキーワードに出てきている。

福岡:夕飯のときにスマホのゲームやってて叱られるという家庭はけっこうありますよね。でも、これってわれわれの子ども時代に、ご飯食べてるときにマンガ雑誌開いて怒られたこととちょっと似てますよね?

藤川:あるいはテレビつけっぱなしとかですよね(笑)。
 ただプライベートな端末を持ってる子どもはわざわざGIGAスクールの端末でYouTube は見ないんじゃないかな。保護者が恐れているのは、スマホについては家でかなり厳しくルールを守らせていたのにそれまでの努力が全部無駄になってしまうんじゃないか、そういう恐れがあるんじゃないですかね。

福岡:なるほど、そういう危機感がこのアンケート結果に出ているんですね。
 そこで、今度は先生のほうの意識にフォーカスしたいと思うんですが、保護者は、先ほどのYouTubeに加え、ICTによる格差みたいことに関心を持っている。対して先生は、ICTの整備であったり、リテラシーのところに問題意識を持っているようにアンケート結果からは読みとれます。特に小学校のかなりの先生は、ネット環境が整っていないことを気にしています。

図26
GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケート結果及び今後の方向性について」より

藤川:やっぱり教員として一番怖いのは、授業でうまくネットやPCが動かなくて授業が止まってしまうことだと思うんですよね。ICTを使う時の最大の恐怖なんですね。黒板とノートでやってるぶんには、授業ってまず止まることはない。だけどICTだと、ネットやPCが動かないともうどうしようもない。立ち往生の場面が生じてしまうので、教員が一番困りますよね。

福岡:確かにICTの機器を利用した授業って、そこが動かないとなると授業の根本が崩れてしまいますね、そういう恐怖感とかプレッシャーとかがアンケート結果に現われているんですね。

藤川:それが大きいですよね。不安があるからしっかり準備しなければいけないし、そのぶん教員の負担も増える。子どもが予想外のことをした時にじゃあどうすればいいの?みたいなことも教員は問われてしまう。だから、やっぱりネットやPCが止まってしまうことへの不安は、教員の意識にかなり影響を与えてるんじゃないでしょうかね。

第1回はここまで。 次回は、その解決策について探っていきます。

「プログラミング教育の現状に喝!」はこちらから
【対談企画】プログラミング教育の現状に喝! 第2回 プログラミング教育が学びの在り方を変える
【対談企画】プログラミング教育の現状に喝! 第3回 ひとり1台ICT端末の活用法
【対談企画】プログラミング教育の現状に喝! 最終回 これからのプログラミング教育の課題

●まずは登録! →  LINE entry
●LINE entryの動画はこちら! →  YouTube
●公式Twitter フォロー、いいね!・RTもお願いします! → 公式Twitter
●ブックマーク登録お願いします →  公式ブログ