LINE entryの学校向けの新しい教材「辺を回転させて いろいろな角をかこう」が2月18日に公開されました。制作にあたり、元となる教材や資料をご提供いただき、また監修としてご指導・ご協力をいただいた放送大学客員准教授・東京都杉並区教育委員会ICTアドバイザーの倉澤昭先生にお話しを伺いました。教科書だけでは学べない、プログラミング学習の意義とは?

学校向け教材「辺を回転させて いろいろな角をかこう」
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LINE entryとその教材は、どなたでも無料でダウンロードしてご利用いただけます。


―― 小学校のプログラミング教育が必修化されてから、2年ほど経ちましたが、小学校でのプログラミング教育の現状はいかがでしょうか? 環境は十分整っていますでしょうか?

倉澤先生(以下敬称略)
 GIGAスクール構想によって、もう1人1台のタブレットなど端末はそろいました。ただ、「プログラミング教育の手引き(以下手引き※)」の内容が十分には理解されていないように感じます。最初のころは「プログラミングってロボットを動かすことなんだな」くらいにしか思われていませんでした。実際にプログラミング教育が始まってからも、得意な先生だけがやりはじめている状況で、そういう意味ではあまり変わっていないとも言えます。
※文部科学省が公表している「小学校プログラミング教育の手引き」。
https://www.mext.go.jp/content/20200218-mxt_jogai02-100003171_002.pdf (PDF)

―― 端末などの環境以前に、先生方の意識がまだ変わっていないと。

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倉澤昭先生


――倉澤先生は、放送大学でプログラミングの授業をされていらっしゃいますが、どのような授業なのでしょうか?

倉澤 プログラミングは、「情報活用能力の育成」の中のひとつにすぎず、プログラミング科ができたわけではありません。小学1年生2年生では、プログラミングより情報モラルやリテラシーのほうが大切になるはずですが、今の(コロナ過の)状況では、それらをやっている時間が取れないんですね。放送大学の私の授業では、基礎技能を身につけるために1年生2年生は、タブレットやソフトのリテラシーに重点を置いていて、プログラミングは行ないません。3年生では、3コママンガを作るというプログラミングを行ないました。例えば、遊びに行こう→どこへ行く?→海に行くというようなお話を作り、まずは絵コンテを書いてもらいます。次に絵コンテをもとにLINE entryでプログラミングを行ない、3コママンガに仕上げます。これで、タブレットの操作ですとか文字の入力といった基礎技能を身に付けていきます。

―― LINE entryを使っていただいているんですね。

倉澤 そうです。子供も喜んでいくつも作って、最後は私より上手に作りましたね。
 4年生では角の作図を行ないます。まず分度器を使って紙に角を作図してもらうのですが、子供たちは左回りの角しか書かないんです。しかし、プログラミングを行なうことで、例えば左回りに120°の角も、右回りでは一度180°に回して、さらに60°回転すれば同じ角になるというようなことが理解できるようになります。
 5年生では正多角形の作図を行ないます。「手引き」を見ると、正三角形を作図するのに左に60°曲がると正しく書けないから左に120°曲がると書いてあるのですが、なぜ120°なのかは書いてないんですよ。大人なら内角、外角の考え方だということがわかります。「手引き」には、「図形に関する既習事項を活用して」とあるのですが、既習事項には「外角」というのはないんです。4年生で柔軟な角の作図の仕方を習得していれば、外角を使わずとも、左回りの120°と右回りの60°を合わせると180°になることが子供たちには理解できます。以上が、放送大学でやった内容です。

―― LINE entryを採用していただいた理由はどういったところなのでしょうか?

倉澤 まずウサギだとか矢印だとかいったキャラクターを簡単に取り入れられるということ。大きさや進む方向も指で簡単に変えられる。テキストも簡単に入れられますね。3コママンガでも使いましたが、場面転換を簡単にできるのもいいですね。それから私が良いなと思ったのは、キャラクターを回転するときの起点の位置を変えられること。通常はキャラクターの中央にありますよね。辺を矢印で作ったとき、起点の位置を左端に寄せられたので、左端を頂点とした回転が非常にわかりやすくなりました。

―― 子供たちの反応はいかがでしたか?

倉澤 簡単に操作できてしまうんですね。LINEのキャラクターも、私よりもはるかに興味あるし、ウサギのなんだとかクマのなんだとか名前(※)も全部知ってました。3コママンガの授業でも、楽しんでやっていましたね。
※ウサギはコニー、クマはブラウンという名前。

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 4年生算数・角の作図の授業の様子。まずは、紙に分度器で作図してからプログラミングで同じ角の作図に挑戦する。

―― 今回監修していただいた教材は倉澤先生が作られた4年生の算数の「角の作図」を土台としたものですが、こちらで子供たちが得る学びというのはどういったものになるでしょうか?

倉澤 各社の教科書を見ると、ここでは「辺の回転が角になる」ということを学ぶはずなのに、どの教科書も扇子を開いたイラストを使ったり、画用紙を円盤に切って2つ重ね合わせたりというようなことでしか提示できていないんですね。角を面積で表わしてしまっている。それだと子供たちには「辺」という意識は出てきにくいんですね。この教材ではLINE entryを使うことで、アニメーションによって実際に辺が回転して角ができるということを子供たちに見せてあげています。これなら辺の回転の大きさが角の大きさにつながっているということが確実に理解できます。

―― 辺の回転、つまり角の大きさを動きとして見られると。

倉澤 はい。それから、この教材では角には右回りも左回りもあるとか、左回りの角と同じ角を右回りでも作れることを体験します。プログラミングを行なったあとで子供たちに紙に作図をさせると、左回りも右回りもいろいろな角を書くようになりました。体験を通して、柔軟な発想で角を認識することができるようになるんですね。学習内容の確実な定着が図れるのです。

―― 学校の授業の中ではどのように使うのがいいのでしょうか?

倉澤 先ほども申し上げたように、教科書の学習だけでは、辺の回転の大きさが角の大きさであることがわかりにくい。そこで、4年生の先生には、角の大きさの授業の導入で使っていただきたいと思います。まず、先生が本教材を使って辺が実際に回転するアニメーションを子供たちに見せてあげることで、子供たちにも辺の回転が角になることが理解できます。最後には子供たちが自分でもプログラミングをしながらいろいろな角を作ってみることも大切です。それから今の段階では、5年生の先生も正多角形の作図をプログラミングする前に、この教材で4年生の角の復習をやってほしい。そうすると、左回りでも右回りでも同じ角を作れるということが「既習事項」になりますから、「外角」を使わなくてもスムーズに正多角形をプログラミングで作図できるようになるはずです。

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本教材にも、左回り右回りさまざまな角を作るレッスンが用意されています。


―― なるほど。それでは最後に、プログラミングを学ぶ児童や教える先生にメッセージをいただけますか?

倉澤 「学習指導要領」や「手引き」によると、小学校のプログラミング教育の狙いは、①プログラミング的思考を育むこと、②情報社会がコンピューターをはじめとする情報技術によって支えられていることなどの気づきと、コンピューターなどを上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと、③学習内容を確実により深く定着させること、この3つです。プログラミングを学ぶことで、この3つが身に付いていくと、学校の勉強だけでなく、生活でもいろんな面で役立っていきます。
 ですから、そのためには先生方がまず日常の教育活動を見直してほしいですね。そして学習指導にプログラミングを役立ててほしいと思います。たとえば、算数の筆算はプログラミングですよということを理解していない先生もいっぱいいますので、そうしたところへも目を向けてほしいですね。

―― ん? どういうことですか?

倉澤 割り算では、立てる、かける、引く、おろすという手順を日常的に使っているわけですよ。実はこれもプログラミングだと先生方は気づかないでやっているんです。いわゆるアルゴリズムですよね。「筆算はプログラミング的思考です」と指導要領にもきちんと書いてあるんですね。だからこういったことをまず意識してほしい。ほかにも、例えば体育の号令、前ならえ、気をつけ、休め、これもプログラミングですよね。自分が意図したとおりに人を動かしているよということで。順番があって、命令をきちんと出すと相手がちゃんと動くようになるよと。もうひとつ例を挙げると、避難訓練も今「おかしも」ってやってるんですよ。「押さない、かけない、しゃべらない、戻らない」の頭文字ですね。こんな抽象的なことを言っているだけでは、真に命を守る行動にはつながりません。プログラミング教育を先生方も徹底すると、火事だ、教室の後ろに並ぶ、廊下に出る、出たら火元はどこか、火元が左だから右へいく、非常口だ、非常口を開ければ出られる。でも、もしかしたら非常口が開けられない、出られない場合がある。その場合には何をする。と、分岐が始まっているわけです。そういうプログラミング的な思考を育んでいくというのを、教科の中や日常の生活指導の中で先生も意識して使ってやっていくと物事はうまくいくし、深く考えられるようになるはずです。私自身も含めて、プログラミング教育は、コンピューターを使ったものだけでなくアンプラグドなものと両方をやっていければいいなと、そんなふうに考えています。

―― 先生も日常にプログラミングを活かさなくてはいけないのですね。本日はありがとうございました。

●プロフィール:倉澤昭先生
小学校長として、2001年に学校行事をネットで地域メンターへのライブ配信を皮切りに、2014年まで継続して学校のICT環境整備やその活用の研究に取り組む。この間、米国や英国の学校ICT活用の状況を視察。
2014年以降、杉並区教育委員会非常勤研究員、大学非常勤講師として、ICT活用のための研修会や講義を年間100回以上行なう。
2018年、文部科学省実施する各都道府県小学校プログラミング教育担当者等セミナーで、全国10ヵ所で講演を行なう。
2019年、韓国の小学校のプログラミング教育の実情を視察。
2020年より、放送大学客員准教授として、小学校プログラミング教育の講義を行なう他、お茶の水女子大学でゲスト講師として、小中学校の連携を考えたプログラミング教育の実践例をLINE entryを使って行なっている。また、杉並区教育委員会学校ICTアドバイザーとして活動している。

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