LINE entryの学校向けの新しい教材「プログラムでエアコンをコントロールしよう!」が3月4日に公開されました。制作にあたり、監修としてご指導・ご協力をいただいた東京学芸大学附属小金井小学校の小池翔太先生にお話を伺いました。子供たちが自主的に情報端末を使った活動をするアイデアとは?

学校向け教材「プログラムでエアコンをコントロールしよう!」

図12
LINE entryとその教材は、どなたでも無料でダウンロードしてご利用いただけます。

―― 今回の6年生の理科用教材「プログラムでエアコンをコントロールしよう!」を使ってリリース前にテスト授業を行なっていただいたそうですが、いかがでしたか?

小池先生(以下敬称略) 「この教材さえ使えばオーケー」と言ってしまうのは正直ちょっと難しいかなと思いつつ、単元のまとめとしては非常に効果があり確かな手応えを感じました。
「難しい」というのは、本教材があくまでコンピューター上で動くエアコンのシミュレーションであって、実物を使った実験を行なうものではないからです。一方で、そういった実験だけで環境配慮とか節電行動にまで結びつくような体験になるかと言ったらそれも難しい。本教材は電気代などが具体的な数値で示されていて、プログラミングを行なうことで節電につながるというようなフィードバックがあり、とても効果的だなと思いました。

―― 子供たちの反応はどうでしょう。

小池 今回行なったのはオンラインでのリモート授業で、時間も1時間しか取れなかったため(※)子供たちに詳しく感想を聞くことがあまりできなかったのですが、授業の最後に「プログラミングはあまりやって来なかったけどとても楽しかったです」とか「節電に結びつけたいと思います」みたいなことを言ってくれたので、こちらのメッセージは、子供なりに体験を通してきちんと届いたんだなと思いました。それと、夢中になってシミュレーションをやめないんですね。ゲーム感覚って言うんでしょうか、どうすればもっとハッピーになれるかって試行錯誤していた姿もありましたね。 ※本教材は45分×2コマの授業を想定している。

図13
小池翔太先生

―― 理科の授業にプログラミングを取り入れる意義とは何でしょうか?

小池 理科の「電気の利用」の単元では、電気は手回し発電機を回して作ったりコンデンサーなどに貯めたりすることができるというエネルギーの変換の学習があります。また、日常生活において、たとえば街灯を見たとき、プログラミングで制御することで電気の効率的な使用になるよということを学習します。教科書で紹介して終わりなのではなく、子供たちが実際にプログラミングで電気の制御を体験するというところはプログラミングを取り入れる大きな意義かなと思います。どこかの誰か、プログラマーとか電気工事士の人がやっているんだなで終わるのではなくて、自分たちもやってみようという機会を持つことで、使い手だけの目線ではなく作り手の目線にもなると。ブラックボックスにしない。

―― なるほど。それはそれとして、難しさや課題もあるのではないですか?

小池 はい。実験を行なうには、そのための教材の準備や環境が必要です。たとえば水蒸気の学習であればビーカーや液体、アルコールランプとかは理科室にあり、安全面などの指導の蓄積もあります。ところが、プログラミングを体験する環境作り、たとえば(ロボットなどの)プログラミング教材とコンピューターとの接続を設定するといったことを、時間とコストをかけてできるのは、それなりにプログラミングを体験している先生でないと難しいんです。子供たちにも、コンピューターを使いこなせる素地が必要です。プログラミングが必修化して2年目になっているので、算数でプログラミングを体験しているはずなんですが、どうもプログラミング自体がピンと来ていない子も多いようなんです。逆にもともとプログラミングが好きな子にとっても、授業でやるプログラミングが自分の知っているものよりも面白くないようではあまり意味がないですよね。

―― 確かにそうかもしれません。本教材の題材を決める際にも何人かの先生を交えてだいぶ議論させていただきました。授業で取り扱うLEDや電池などを取り入れたほうがいいのではというご意見もありましたし、玄関の明かりのように身近な物を扱ったほうがいいのではというご意見もありました。このような議論の中で、今回はエアコンをコントロールするという内容になったのですが、こうして完成したものに対して小池先生の思いなどありましたら教えてください。

小池 厳しい言い方になってしまいますが、やはり実物をプログラミングしないとどうしても意味は薄くなってしまうんですよね。もともと電気の効率的な利用というテーマでは、実験をするのが難しいんです。ただ、そこは割り切ってしまって、実物を制御するプログラミングでは足りない部分、つまり節電行動みたいなものを、初心者の先生にも子供にも優しいLINE entryというプラットフォームで作ることには可能性があると思いました。ほかの先生方も価値を見出しておられたので、「ああ、これは間違いないな」と私も実感できました。
児童にとっても、エアコンをプログラムで動かして節電するということは、話はできても実際に体験することはできません。実験的にそれができる教材も、私の知る限りではほとんどなかったと思うんです。あくまでシミュレーションではありますが、自分たちが作ったプログラムによって電気代が変わり具体的な数値で見られるというフィードバックがあって、そういう内部があることを実感しつつ考えを巡らせることを、単元の最後にまとめとして行なうのは子供たちにとってもいい学びになります。節電がたんに努力とか精神論ではなくて、きちんと数値で評価するところまで理解できることが大事なので、そういうことはやはり理科の科学的なところ、学びだろうと思います。
とはいえ、実際に本教材を使うときには、これさえやれば理科のプログラミングの狙いが達成できますというように過剰には捉えず、節電や電気の効率的な利用に対する理解を深めるためのシミュレーション教材なんだという自覚をしっかり持つことも大切でしょうね。

図14
本教材では、コンピューター内に作った仮想的なエアコンに対し、電気代を安く抑えるようなプログラムを工夫・試行錯誤しながら作ります。

――小学校でのプログラミング教育の現在の状況を教えていただけますか?

小池 はい。(タブレットなど)情報端末が1人1台揃うというような、必修化前には考えられなかった環境が日常的になってきました。ただ、使いこなせている学校と、そうではない学校の格差は広がっているように感じます。これは学校や先生だけのせいではなく、自治体や保護者の考え方だとか複雑な要因が絡んでいることもあります。今は、ただでさえコロナ禍で対応が大変で、正直、いかに授業を最後までやりきるかということでいっぱいいっぱいな状況です。子供たちも相当ストレスを抱えているところです。
だからこそ楽しい教育、子供たちが楽しめる学習をしていきたいっていう純粋な先生の思いはあると思うんですよね。コンピューターを使った学習やプログラミング教育は、そういうのを打開するチャンスなのかなと思っています。これはICTに明るくない先生でも、子供たちのコンピューターを使った学びの姿を見れば、すんなりと受け入れてくれるのではないかと。
しかし、現状としては、子供たちが情報端末でゲームを遊んでしまったり、動画を見てしまうようなこともあり、ルールを厳しくした方がいいんじゃないかとか、休み時間にもコンピューターを使うのはどうなんだとか、家に持ち帰るのもどうなんだとか情報端末を学習のためではなく娯楽のものだと考えてしまう風潮もあって……。あまり規制に向かうと児童側でも抜け穴を探すことになって、そういうイタチごっこみたいなことをしてしまっている学校も多いのではないかと思います。そういう意味ではコンピューターを学びの道具にすることについては、まだ試行錯誤段階なのが現状と言ったほうがいいのかもしれません。

―― 難しいところですね。うーん、どうするのがいいのでしょうか。

小池 学校の中で「係活動」というのがあるんです。新聞係とか。当番活動と混合されがちなんですけど、係というのは、子供たちが自主的に仕事を作って、自主的にクラスのために何かアウトプットをする、クラスをより良くするためのものなんです。当番活動は、給食当番のようにみんなで持ち回りやるべきことをやる。
私が今注目して力を入れているのが、そうした自治的な係活動における情報端末の活用です。たとえば、新聞係がパワーポイントを活用して新聞を作ったり、アンケートフォームを使ってアンケート調査をして新聞に掲載するといった感じのものです。子供たちが、遊びの要素もありつつ生活をより豊かにしていくという文脈で端末を使うのは非常に可能性があると思っています。
授業以外の生活の中で子供たちが自主的に端末を活用する素地がないと、授業の中で効果的な端末の活用も生まれないわけで。そういう係活動も、家に端末を持ち帰ったり休み時間に使う事を認めていないとなかなかできません。

―― プログラミング教育について、国や自治体、あるいは私どものような学習教材提供者などへの要望はありますか?

小池 LINEさんは、出前授業を積極的に行なっていますよね。今はまだ、そのような学校への足場がけのようなことをしてあげる必要があるように感じています。プログラミングの教材を作ってそれで終わりというか「これで授業してね」というだけでは、現状の学校では自律的に使えないのではないかと。このコロナ禍をむしろチャンスにして、必要な資料だとかZoomなどのコミュニケーションツールの接続設定だとかの学校側の負担が必要最低限になるようなオンライン・リモート授業みたいなものがもっとあると良いなと思います。国や自治体でも、教材を作って活用事例を紹介して終わりというのではなくて、出前授業の受け付け先やどのようなタイミングでできるのかといった情報をまとめたり発信していってほしいですね。実際の授業の様子や具体的な流れなども示さないと、コロナ禍で大変なこともあって、学校もなかなか自走しきれない。

図15
LINE entryを使った小池先生の授業(5年生・算数)。この様子は以下のアドレスから動画をご視聴いただけます。
授業実践から学ぶ「小学校プログラミング授業」/LINEみらい財団 https://www.youtube.com/watch?v=93sPkP3hmLw

―― 最後に子供たちや先生へのメッセージをお願いします。

小池 GIGAスクールが始まって、プログラミングが娯楽とかゲームというネガティブな捉え方になってしまったというのは、私は想像していませんでした。使い手だけではなく作り手にもなるという本来のプログラミング教育の目的を、先生方にも子供たちにももっと伝わるようにしていきたいなと思っていまして。先ほどの係活動の話ではありませんが、子供たちが教室の中でデジタルを活用して生活がちょっと豊かになったという活動を、先生も子供も主体的に取り組めるような場をうまく整えてあげたいと考えています。授業以前に生活を良くするためにプログラミングをしていくこと、楽しい学びの実績を子供たちと一緒に作っていきましょう。

―― 期待しております。本日はありがとうございました。


●プロフィール:小池翔太先生
東京学芸大学附属小金井小学校 教諭。千葉大学大学院人文社会科学研究科 公共研究専攻 博士後期課程 学生。修士(教育学)。立命館小学校 講師、千葉大学教育学部附属小学校 教諭などを経て、現職。
 専門は授業実践開発研究。ICTを活用した教育や企業と連携した教育など、現代的な課題を踏まえた授業・教材づくりについて実践的に研究を行う。
 2021年度は5年生担任として、1人1台端末を日常的に活用した実践を行っている。校内研究においては、ICT部会に所属して「ICT×インクルーシブ教育」をテーマとした実践的研究に取り組んでいる。

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