これからのプログラミング教育はどうあるべきか、LINE entryの教材開発にもご協力いただいている放送大学客員准教授・東京都杉並区教育委員会ICTアドバイザーの倉澤昭先生にお話を伺いました。

日本の教育現場のICT整備やプログラミング教育の現状についても伺っています。以下のリンクからぜひご覧ください。
【放送大学客員准教授 倉澤昭先生インタビュー1】日本の教育現場のICT整備やプログラミング教育は、どのように進められたか。

―― 先生の考える理想のプログラミング教育とはどのようなものでしょうか、また実現するには何が必要とお考えですか?

1.A分類~D分類のねらいを理解する
現在のプログラミング教育を見ると、小学校で授業時間が保証されているのは、各教科等での学びをより確実なものにするために行なわれるA分類の領域だけです。
しかし、小学校では1年生から楽しさ優先のプログラミングの授業が行なわれていることも多く、何の教科で行なわれているのか、何の授業時間なのかが不明確のままになっていることもよくあります。これらの多くは、C分類に当たるプログラミングであり、学校裁量の時間(年間の授業日数や週の授業時間数を増やして確保した余剰の時間)の中で行なう必要がある授業です。
つまり、各教科等で必要な時間をプログラミングの時間で使ってしまい、本来の教科で使われるはずの時間が少なくなってしまっているのです。こうしたことが続けば、本来の教科の学習量が少なくなり、子供の学力の低下を招くことにもつながりかねません。そんなことにならないように、小学校プログラミング教育の手引に記載されている各分類のねらいを理解して、しっかりと計画を立てて取り組んでいただきたいと思います。

図2
小学校プログラミング教育の手引ではAからFの6分類がある。学校教育の対象となるのはAからDまで。


2.もっと情報リテラシーや情報モラルを学ぶ時間を
平成28年12月の中央教育審議会答申は、情報活用能力の育成について
〇小学校段階から,文字入力やデータ保存などに関する技能の着実な習得を図っていくことが求められる。
〇小・中・高等学校を見通した学びの過程の中で,「主体的・対話的で 深い学び」の実現に資するプログラミング教育とすることが重要である。
とされています。

小学校のプログラミング教育は、情報活用能力【情報活用の実践力(情報リテラシー)、情報の科学的な理解(プログラミング)、情報社会に参画する態度(情報モラル)】の内容に含まれています。しかしこの能力の育成のために、学習指導要領で保証されている時間は多くありません。
情報リテラシーは、3年生の国語でのローマ字入力でのキーボード操作、情報モラルについては、5年生の社会での「情報化が社会や産業に与える影響」程度しかありません。
このため、情報リテラシー、情報モラルを学ぶための時間は、プログラミングと同じように、その多くを前述の学校裁量の時間に頼るしかなく、答申のようには進んでいない現状があります。

3.理想のプログラミング教育とは
(1)現状での理想
A分類、B分類など、分類に基づいて適切に実施されることだと思っています。その中で、多くの人にB分類での実施内容について検討して欲しいと思います。例えば、A分類の5年生の正多角形の作図の前に、4年生の角の学習をB分類のプログラミングとして行なうことで、5年生の学習も4年生の学習も深めていくことができますし、プログラミング的思考とプログラミングの技能の両方が高まっていくことが教師も子供も実感できます。
そして、こうして身についたプログラミングの力は、総合的な学習の時間や各教科でのまとめや発表の資料作りにも積極的に活用されるようになります。これまで、新聞づくり、プレゼンテーションソフト、授業支援ソフトだけで作成していたプレゼン資料をプログラミングでも作れるようになり、学習の個性化へとも発展していきます。

(2)将来的な理想
現在、情報端末が1人1台の時代になり、情報リテラシーや情報モラル、プログラミングなどの情報活用能力の育成は益々重要になっています。
私は小・中学校にも情報科を新設し、高等学校も見通した情報活用能力の育成の中でプログラミング教育を実施していけるようになることが最も理想の形と考えます。

―― GIGAスクール構想が導入され児童の学習環境は大きく変化しました。これまでの教育と変えるべきところ、変えるべきでないところはありますか?

ICTは、個別最適な学びと協働的な学びを一体化させるために必要不可欠なツールであると考えます。 教師は、すべての子供たちの可能性を引き出すために、それぞれの子供に応じた指導を行なう努力をこれまで通り変えてはならないと思います。
そして、その中でICTを有効に活用することで、教師は伴走者となり、教師が主役の授業から、子供が主語となる授業へと転換していってもらいたいと考えます。
このことが「個別最適な学びと協働的な学びの一体化」を生み出し、「主体的・対話的で深い学び」の視点にたった授業改善につながっていきます。その際に留意することは、決して無理はせず「今やっている授業」に、教師自身のICT活用能力に合わせて、少しずつICTの活用を加えながら工夫していって欲しいと思います。

―― 今後LINEみらい財団に期待していることはありますか?

1.学習の個性化を進めるためにもキャラクターの充実を
現在求められている個別最適な学習に、プログラミングは大いに役立つと考えています。実際に、学習の個性化への取り組みで、プレゼン資料等でLINE entryを活用することで、学習は意欲的に進められ、実践を深めていく様子を目の当たりにしました。
子供たちがこうした学習に取り組む際に、LINE entryは簡単に使うことができ、工夫しやすいとてもよいプログラミング学習環境です。
さらに、様々な教科等で活用するために、キャラクターの充実をお願いしたいと思います。
算数の角で使いたい「細い矢印」や算数、理科の各種教材等のイラストです。こうしたものがあると、プログラミングが教科等の学習で使用される場面がもっともっと広がっていくと考えています。

2.教科学習等を中心としたプログラミング教育の継続を!
これまでも、LINEみらい財団は、LINE entryを活用して、教科等におけるプログラミング教育に積極的に取り組んで来られました。また、情報モラル教育にも力を入れておられ出前授業など直接学校を訪問するなど、教育現場を支援してくださいました。こうした姿勢は、是非今後も変えることなく進んでいっていただきたいと思います。

―― 本日はありがとうございました。

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倉澤先生には2回に渡って、日本の教育現場のICT整備からこれからのプログラミング教育まで幅広く、また実際に行なった事例などを交えて詳細にお話いただきました。LINEみらい財団は今後もプログラミング教育のさらなる発展のため積極的にサポートを続けていきます。

●プロフィール:倉澤昭先生
倉澤昭顔写真

小学校長として、2001年に学校行事をネットで地域メンターへのライブ配信を皮切りに、2014年まで継続して学校のICT環境整備やその活用の研究に取り組む。この間、米国や英国の学校ICT活用の状況を視察。
2014年以降、杉並区教育委員会非常勤研究員、大学非常勤講師として、ICT活用のための研修会や講義を年間100回以上行なう。
2018年、文部科学省実施する各都道府県小学校プログラミング教育担当者等セミナーで、全国10ヵ所で講演を行なう。
2019年、韓国の小学校のプログラミング教育の実情を視察。
2020年より、放送大学客員准教授として、小学校プログラミング教育の講義を行なう他、お茶の水女子大学でゲスト講師として、小中学校の連携を考えたプログラミング教育の実践例をLINE entryを使って行なっている。また、杉並区教育委員会学校ICTアドバイザーとして活動している。