今回は2年前に出版された『ライフロング・キンダーガーデン』という本についてお話ししたいと思います。本の帯にある「プログラミング必修化の今こそ必要だ!」という煽り文句のとおり、プログラミングを教える側、教わる側、さらにそれを見守る側の人含めて、プログラミング教育に関係するすべての人に読んでほしい本なのです。

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著者のミッチェル・レズニック氏はMIT(マサチューセッツ州工科大学)メディアラボのラーニング・リサーチの教授。というより、ビジュアルプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」の開発チームのリーダーを務めたことで有名です。そのチームこそ、この本のタイトルにもなっているライフロング・キンダーガーデン(生涯幼稚園)という名前の研究グループでした。また、共著者のおひとり、青山学院大学の阿部和広先生はそのScratchの日本語化にご尽力された方で、プログラミングに関する多くの著作を著わされています。
 
本の中で、レズニック氏は冒頭、「この1000年間における最も偉大な発明」は何かと問いかけます。そして、すかさず、それは蒸気機関でも印刷機でもなく幼稚園であると言い放ちます。
 
1837年、ドイツの教育学者、フリードリッヒ・フレーベルによって世界初の幼稚園が開設されます。幼児教育の重要性を説いたフレーベルの教育思想は、幼稚園とともに世界中に広がっていきます。彼が作った「恩物(おんぶつ)」という玩具は特に有名で、20種類の恩物のうち、第3から第6恩物は私たちがすぐにイメージできる積み木です。世界遺産となった米・ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館や、日本の帝国ホテルなどをデザインした著名な建築家、フランク・ロイド・ライトは、子どものころに遊んだ恩物による自身への影響について語っているほどです。

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フレーベルの幼稚園は、それまでの教育とまったく異なるアプローチを採用していました。それは、「教育放送モデルから対話型モデルに」とレズニック氏が本書の中で語るとおり、一方的に何かを教えられる教育から、玩具や自然物との対話を通して子どもたちが自発的に「世界を「再創造」する」ことを目指していました。レズニック氏は、この幼稚園の学習方法における創造性に着目し、「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」(創造的な学びのスパイラル)というものを提唱します。まず、始まりに「発想」(Imagine)があり、それをカタチにするための「創作」(Create)、そしてその創作物での「遊び」(Play)。これを他の誰かと「共有」(Share)し、その結果を最後に「振り返る」(Reflect)。そしてまた新たな「発想」へとつながっていくスパイラルです。言葉だけを見ると難しい気がしますが、小さな子どもたちが公園の砂場で遊んでいる光景を思い浮かべると、実は子どもたちがいつもやっていることだと気づきます。砂場でトンネルを作ろうと「発想」した子どもは、砂を山の形に固め、スコップや熊手で掘り始めます(「創作」)。トンネルが完成すると、クルマのおもちゃをくぐらせて「遊び」始めます。そこに仲間が加わって(「共有」)、クルマを何台も同時にくぐらせようとしてトンネルは崩れてしまいます。そこで、トンネルの穴が小さすぎたことに気づき(「Reflect」)、次はもっと大きなトンネルを作ろうと考えます(「発想」)。あるいは、トンネルの強度が足りなかったことに気づいて、砂山を水で濡らして強く固めるアイデアを思いつくかもしれません。小学校におけるプログラミング教育を考えるとき、いつも、レズニック氏の言うこの「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」のことを考えます。学習プラットフォームをひとつの「砂場」と見立てたとき、僕たちの作るLINE entryの教材は、子どもたちをクリエイティブ・ラーニング・スパイラルへと導くなじみやすい道具でなければなりません。トンネルを効率よく掘れるだけの道具ではダメなのです。次の創作へとつながる、そのサポートを果たすものでなければならない。2年前に買ったこの本を読み返す度に、僕たちはいつも、この教材づくりの原点に立ち返ります。創造性を教えることは困難です。が、想像力を組み立てるお手伝いを通じて創造性を育むことはできます。プログラミング教育の先人たちの教えを、今こそ再度心に留め置いていきたいと思います。 

<著者プロフ>
福岡俊弘  LINEみらい財団/デジタルハリウッド大学教授
1957年生。「週刊アスキー」編集長、総編集長を経て、2017年よりプログラミング教育に携わる。
今年4月からLINE entry教材編集チームに参加。

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