かなり古い話をしようと思います。
24年前のこと、当時、『一太郎』という日本語ワープロソフトが国内で圧倒的シェアをもっていた時代の話です。『一太郎』はもちろん今もワープロソフトとして多くのユーザーに使われていますが、そのころの『一太郎』は、現在の『word』のように、ワープロソフトのデファクト的な地位を占めていました。なので、その『一太郎』の新しいバージョンが発売になると、今のiPhoneほどではないにしても、それなりに世間のニュースになっていたのです。

 

さて、その年にリリースされた新しい『一太郎』は、前年に発売され大きな話題となったWindows95に対応したもので、そのため、いつも以上にマスメディアがとりあげるネタとなっていました。そんな中、とある地方のラジオ局から、生放送で新しい『一太郎』の話をして欲しいとの依頼がありました。当時、私は『EYECOM』というパソコン雑誌の編集長をしており、こうした取材依頼はいくつも受けていたので、いつも通りに対応をしました。

 

取材は、電話でラジオ局のスタジオと結び、先方の質問に電話口で答える形式です。「今度の一太郎、どんな機能が追加されたんでしょう?」「はい、今回、〇〇という機能が新しく……」。2人のアナウンサーがいて、主に質問をするアナウンサーともうひとりのアナウンサーは相づちを打つだけという展開。5分ほどのやりとりがあって、これで出番も終わりかな、と思っていたとき、ずっと相づちを打っていたアナウンサーから思いがけない質問が飛んできました。

 

「『一太郎』でどんなことができるんですか?」

「……え?」

 

無邪気な声で繰り出された質問に一瞬気を失いかけました。ワープロソフトの意味、知ってる? 明るいトーンの声とは裏腹に、この重い重い問いかけを前に、「そ、そのまあ、日本語が入力できて、それをキレイに印刷できて……」と力なく答えるしかありませんでした。日本にインターネットが本格的に普及する前の1996年、世間のITに対する知識はそんなものだったのです。

 

今にして思えば、「はい、『一太郎』を使えば空を飛べるようになりますよー」とか適当に答えておけば良かったと思います。

 

あれから24年、今年1冊の本が発売されました。『学校を変えた最強のプログラミング教育』。

著者は、東京都小金井市立前原小学校の前校長、松田孝氏です。松田氏は、この本の中で、自ら実践したプログラミング教育の例を提示しながら、society5.0時代の教育のあるべき姿を熱く語ります。本の帯に書かれた「プログラミング教育の第一人者による魂の学校教育論」という言葉に嘘はありません。

 

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プログラミング教育に学びの未来を感じ取った松田氏は、試行錯誤を繰り返しながら理想の授業の姿を追い求めます。そしてその先に、これからの学校のあるべき姿を説きます。一方で、プログラミングの授業における極めて実用的な指導法のヒントが随所に散りばめられています。哲学書であり実用書。つまり、この本は教育の革命書なのです。

 

「今が変わるチャンスですし、今こそ変わらなければなりません。教育活動の内容も、制度も」(同書「第1章 今の学校は子どもたちの未来に責任をもてない」より)

 

松田氏が繰り返し語っているのは、コンピューターのない時代の教育は、コンピューターが“ある”教育にとって変わらなければならない、ということです。なぜなら今の子どもたちは、コンピューターが、AIが、社会の前提となる未来を生きていかなければならないからです。

 

24年前、日本語ワープロソフトのちょっとした進化は、多くの人に未来をイメージさせるに至りませんでした。「それで何ができるんですか?」と。ほとんどの人は、コンピューターが「ない」状況だったからです。コンピューターがない以上、その未来のイメージがわかないのは当然です。が、今、GIGAスクール構想の推進によって、遠くない未来に、パソコンやタブレット端末が子どもたち1人1台の学習環境が実現しようとしています。コンピューターが当たり前に“ある”時代に変わりつつあるのです。そしてこのコンピューターと対話するための方法がプログラミングなのです。

 

 

「プログラミングで何ができるんですか?」

「はい、空を飛べるようになります。それだけじゃなく、飛んでる人同士とどこにいても会話ができて……」

 

 

 

 <著者プロフ>

福岡俊弘  LINEみらい財団/デジタルハリウッド大学教授

1957年生。「週刊アスキー」編集長、総編集長を経て、2017年よりプログラミング教育に携わる。

今年4月からLINE entry教材編集チームに参加。

 

 
【LINE entry編集部コラム】未来の学びと、学びのミライ 第1回

 

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